2020 年 36 巻 1 号 p. 62-67
本稿は日本における1960年代後半のバリアフリーの発祥から今日までの展開を概観したものである.日本のバリアフリーの動きは1970年初頭に始まっているが,当初から欧米諸国からの学びが多く,同時にその経験をいち早く実行に移した,障害者自身の行動力によるところが大きい.一方,研究者らはそれらへの技術的情報提供を怠らなかったともいえる.その後80年代の福祉のまちづくりの取り組みを経て,90年代以降のバリアフリー関連法制度の時代が始まる.そして2020年の東京オリンピック·パラリンピックの開催決定を向け,多様な市民の共生を謳うインクルーシブな社会環境への創出に向かっている.ユニバーサルデザインはこれらをハード·ソフトの両面から具体化する技術的プロセスとして今や十分な市民権を有したといえる.バリアフリーの新たな展開に対応した重要なキーワードの1つである.