抄録
本報では,小学校から高等学校までの家庭科教育において,障害者や障害に関する記述内容の現状分析と10年前との比較検討を,教科書と学習指導要領ならびに指導書,指導要領解説について行った。その結果,小・中学校の家庭科に関する学習指導要領,指導書においては,1977年と1989年改訂時ともに障害者に対する記述がなかった。また,現行の教科書でも障害者に関する記述は,ほとんど見られなかった。高等学校の現行教科書では,13冊中4冊が障害者や障害について「積極的」に記載しており,採択数からみると半数の教科書が積極的な位置づけをしている。これを10年前の教科書と比べると,障害者問題に対する取り組みは,格段に進歩した様子が窺えた。しかし,高等学校の学習指導要領や指導要領解説は,1978年改訂時とほぼ同様であり,障害者問題での取り組みの遅れが認められた。