日本教科教育学会誌
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わが国における『生涯スポーツ』概念の実情と学校体育との関連について(II) : 体育科教科課程研究の課題の鮮明化の視点より
松岡 重信山下 理子沖原 謙
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1994 年 16 巻 4 号 p. 155-163

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抄録
先報(1991)では,『生涯スポーツ』概念の形成課程を吟味することと,その概念の実質的イメージについて検討した。そして,それらの作業に基づいて,生涯スポーツ概念と学校体育の機能との関係を問題にした。議論の結果,生涯スポーツや生涯体育の概念が活発に議論されて学校の機能・役割との関係も議論された割合には生涯スポーツの実態もイメージも余り明確でなく,従って両者の関係も曖昧モコとしていることが明らかになった。そして,生涯スポーツ運動に連動する形で,中等教育学校で<習熟度別授業>や<選択制履修授業(以下「選択制」と略す)>を積極的に位置づけようとする働きが,理論的にも実質的にも相当不可解なものと理解された。さらに,こうした実態もイメージも不明確な状況でありながら,それでいて体育の教科内容や教科課程にかかわる問題意識は一般にさほど高くない。少なくとも,日本体育学会や日本教科教育学会でみる限り,こうした学校内外の体育・スポーツの将来構想にかかわる問題意識をもつテーマは,一部シンポジウム等を除けば最近の5年間ほとんど設定されていない事実も認められる。そこで,生涯スポーツに関連させようとする学校体育の趨勢,即ち代表的には選択制の導入等は今日的に,かつ将来的にはいかなる意味をもち,学校教育にどのような影響をおよぼすかについて,改めて予測的に検討したい。その際,スポーツや運動は,<国民的教養>あるいは<国民的権利>とさえ把握されようとしてきた思想や社会的運動そして歴史・伝統に,学校体育が現実にどうかかわっていけるのかという視点を軸としたい。
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© 1994 日本教科教育学会
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