抄録
本研究は,現代のコンピュータ社会における映像メディアと美術教育との関連から。「総合的な学習」の一内容として,映像メディアを取り入れる意味を論じたものである。本稿の前段では,メディアと人間の感覚の関係を分析し,筆者が製作に携わったCD-ROM『宮澤賢治全詩集』のハイパーテキストに焦点をあて,マルチメディアとしての表現の可能性を考察している。筆者はマルチメディアによる表現とは,様々なメデイアを駆使し,五感を働かせて総合的,統合的に表現していくものであると捉えている。後段では,美術教育の今日的な課題でもある映像メディアをめぐる教育のあり方を起点に,「総合的な学習」とかかわって,マルチメディアによる表現力を培うことの教育的意義と,その役割を迫っている。