日本教科教育学会誌
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23 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • チュ ユンギョン
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻2 号 p. 1-10
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    学習指導要領の改訂のたびに理科の内容構成は変化してきた。本研究の目的は,平成元年小学校学習指導要領の内容構成の変化に関係した人たちの多面的な議論及び多種の要因との関連性を解明することである。研究方法としては,平成元年小学校学習指導要領の内容選択に関する諸資料分析とその作成に直接関わった作成協力者及び文部省の関係者へのインタビューを用いる。その結果,教科・科目構成の変化,内容構成原理及び区分の変化,具体的内容の変化という内容構成の変化の三つの項目で内容構成の変化をめぐる多面的な議論や要因を明らかにした。
  • 鈴木 洋子
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻2 号 p. 11-17
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    技術科と家庭科の2つの教科がひとつの教科として扱われている日本の中学校「技術・家庭」の分離独立へ向けての示唆を得るために,技術教育的視点より編成された英国のフードテクノロジーの特徴について検討したところ,食品の加工に重点を置いていること,職業選択を援助する内容を多く含んでいることがわかった。技術教育的視点からの食物学習は,人間と食物との関わりを扱った学習が希薄になっている。
  • 中村 朋子
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻2 号 p. 19-28
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    教室環境で6年間英語の授業を受け,目標言語の知識を持っていながら,著しく熟達度レベルの低い英語学習者を本稿では疑似初心者(false beginners)と呼ぶ。彼等の語彙処理の特異性を明かにするために,疑似初心者と同年齢で英語熟達度の高い大学1年生のデータと比較した。分析結果から,日本語を母語とする英語学習者が学習発達段階を順調に辿るには,言語学習の第一歩である語彙処理の自動性が必須条件であることを証明する。また不規則語の音読・書き取りと意味理解の実験結果から,被験者が綴りと発音が一致しない不規則語を規則的に発音すると,語彙処理過程で意味認知の経路が抑制されている可能性があることを明かにする。また,綴り学習ができていない場合には,音韻情報が意味へのアクセスを助けていると考えられ,この結果から英語授業での音韻指導の重要性を指摘し,音声を介在しない読み書き中心の外国語授業は学習者の健全な第二言語習得に影響を及ぼしていることを提言する。
  • 谷田 親彦, 上田 邦夫
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻2 号 p. 29-36
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,ものづくり学習での製作活動において,中学生が「製作」段階に入る前に,ものづくりに対してどのような考えや意識を持っているかを構造的に把握することを目的としたものである。ものづくりに対する意識の調査は,中学生に自由記述方式で回答を求め,その回答を基礎データとして,設定した製作カテゴリーの出現数を基に,数量化・コレスポンデンス分析を適用した。その結果,中学生の意識構造は,「作業推進」軸と「作業認識時系列」軸と称する2軸で4空間に分割された。中学生は,各製作段階に対する考えや意識が低く,切断,部品加工及び仕上げ・塗装の段階では大学生と比較して有意差が認められた。特に,部品加工では,中学生はつくるものの用途や使い方を意識し,大学生は決められた大きさや形状を考慮した正確なものづくりを強く意識していることがわかった。
  • 芳賀 正之
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻2 号 p. 37-45
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,現代のコンピュータ社会における映像メディアと美術教育との関連から。「総合的な学習」の一内容として,映像メディアを取り入れる意味を論じたものである。本稿の前段では,メディアと人間の感覚の関係を分析し,筆者が製作に携わったCD-ROM『宮澤賢治全詩集』のハイパーテキストに焦点をあて,マルチメディアとしての表現の可能性を考察している。筆者はマルチメディアによる表現とは,様々なメデイアを駆使し,五感を働かせて総合的,統合的に表現していくものであると捉えている。後段では,美術教育の今日的な課題でもある映像メディアをめぐる教育のあり方を起点に,「総合的な学習」とかかわって,マルチメディアによる表現力を培うことの教育的意義と,その役割を迫っている。
  • 朴 南洙
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻2 号 p. 47-56
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,韓国における第2次教育課程期の1963年版「社会科教育課程」を取り上げ,先行研究の見方に対する再検討と,カリキュラム論史的位置づけを行うことにある。そのために,「1963年版」の,(1)編成の歴史的課題,(2)編成原理(目標,内容,学習過程編成),(3)その根底にある社会認識形成の論理を解明した。それは,次の3点に要約できる。(1)社会認識の系統性と国民的資質を重視した社会認識教科としての性格の明確化を課題とした。(2)社会事象の意味と意義の理解を通した態度形成を編成原理としている。(3)その根底には,社会事象・出来事を全体社会での意味,価値,目的との関係で追求するという「理解」論理が内在されている。「1963年版」は,従来の生き方中心から社会認識中心へとカリキュラムの原理を転換させた。社会認識を通して公民的資質を育成することを教育原理とする一教科としての社会科は「1963年版」において成立したと捉えられる。
  • 石井 雅幸, 角屋 重樹
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻2 号 p. 57-64
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,第5学年の各学期で確証と反証による学習指導を1単元ずつ行った場合,小学校高学年児童の,科学の暫定性という特質に関する理解がどのように変わるのかを明らかにしようとした。このため,東京都内の公立小学校1校の平成10年度に第6学年であった117名と平成11年度に第6学年であった101名,計218名を対象に,小学生用の変形NSKSテストを,第5学年時の1学期と2学期,及び第6学年時の1学期の3時期に継時的に実施した。小学生用の変形NSKSテストとは,創造性,テスト可能性,発展性,簡潔性の4種の尺度からなり,4種の各尺度を構成するそれぞれの項目について児童が3段階の尺度値で反応するものである。小学校高学年児童の科学の暫定性に関する理解は,前述の4種の尺度の各尺度構成項目における平均値及び尺度値に対する人数分布に表れると考えられる。そこで,小学校高学年児童の科学の暫定性に関する理解の変容を,前述の3時期における,4種の尺度の各尺度構成項目における尺度値の平均値の変化,及び各尺度構成項目の3段階の尺度値に対する人数の変化という視点から検討した。その結果,以下のことが明らかになった。(1)3時期においてテスト可能性に関する尺度の4尺度構成項目で変容が生じた。(2)3時期において簡潔性に関する尺度の2尺度構成項目は未理解のままで,変容が生じなかった。
  • 鹿野 敬文
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻2 号 p. 65-74
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    この研究において,まず英語教科書における人権(差別)問題の扱い方の特徴を様々な側面から調べた。その結果,「名のある人を主人公にした,アメリカの過去の(人権や差別に関する)出来事」や「忙しい生活の中でつい見失いがちになる『心の目』を開かせてくれる題材」がレッスンのテーマとしてよく選ばれていることが明らかになった。次に,教科書の内容を人権教育の立場から,そして地球市民教育の立場から検討してみた。その結果,何らかのコンセプトに基づいているレッスンは少なく,また地球市民教育の視点を取り込む工夫をしているレッスンも殆どないことが明らかになった。これらのことを踏まえて,人権・差別関連のレッスンの内容を, (知的な高校生が読んでも)満足するような,そして同時に「(英語での発信・交流を含めた)地球市民に必要な力」も身につくようなものにするための改善指針を提示した。
  • 本岡 直子
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻2 号 p. 75-84
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    外国語を読む力には,L1(または母語)の読解能力,L2(または外国語)の言語能力など多くの要因が関わっている。近年の研究では,メタ認知能力が読解に影響を与えるとされてきている。しかしながら,L2読解に働くメタ認知能力をL1読解に働くメタ認知能力と比較した研究は少なく,本研究は,読解過程におけるメタ認知能力の役割をL1とL2の読解を比較することによって明らかにすることを目的とする。質問紙への回答を因子分析した結果,母語読解と英語読解において異なった因子が抽出され,それぞれの読解におけるメタ認知能力の質的な違いが明確にされた。また,重回帰分析により,メタ認知能力が読解に働きかける量的な面においても母語読解と外国語読解の違いがみられた。これらの結果は,日本語読解および英語読解の特性を示しており,外国語における読みの指導に対して重要な示唆および今後の課題を与えている。
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