2000 年 23 巻 2 号 p. 57-64
本研究は,第5学年の各学期で確証と反証による学習指導を1単元ずつ行った場合,小学校高学年児童の,科学の暫定性という特質に関する理解がどのように変わるのかを明らかにしようとした。このため,東京都内の公立小学校1校の平成10年度に第6学年であった117名と平成11年度に第6学年であった101名,計218名を対象に,小学生用の変形NSKSテストを,第5学年時の1学期と2学期,及び第6学年時の1学期の3時期に継時的に実施した。小学生用の変形NSKSテストとは,創造性,テスト可能性,発展性,簡潔性の4種の尺度からなり,4種の各尺度を構成するそれぞれの項目について児童が3段階の尺度値で反応するものである。小学校高学年児童の科学の暫定性に関する理解は,前述の4種の尺度の各尺度構成項目における平均値及び尺度値に対する人数分布に表れると考えられる。そこで,小学校高学年児童の科学の暫定性に関する理解の変容を,前述の3時期における,4種の尺度の各尺度構成項目における尺度値の平均値の変化,及び各尺度構成項目の3段階の尺度値に対する人数の変化という視点から検討した。その結果,以下のことが明らかになった。(1)3時期においてテスト可能性に関する尺度の4尺度構成項目で変容が生じた。(2)3時期において簡潔性に関する尺度の2尺度構成項目は未理解のままで,変容が生じなかった。