抄録
本稿では,教室において分数の意味がどのようにつくられていくのかを明らかにするために,「折る」という子どもの生活経験を用いた分数の授業を分析している。Vygotsky理論に基づく生活的概念と数学的概念,分割量分数,教師の役割という観点から授業を分析した結果,次の結論を得た:1)子どもの生活的概念は概念発達の原動力となっている。2)「分割操作」を中心とした分割量分数Aの意味づくりを基に,そこに暗黙的に存在していた「量」を顕在化する分割量分数Cの意味づくりが行われた。3)教師の果たした役割は,分数の意味づくりを行う適切な場の設定,子どもの生活的概念を理解し,適切なZPDを引き出したこと,適切な教具の使用という3つであった。