本研究では,小学校の各教科(理科・国語・算数)での授業の中に継続的に話し合い活動を設け,その様子を長期間にわたりVTRとテープレコーダーで記録し,児童の話し合い活動の様子を分析した。調査Iでは,子どもたちは教科によってコミュニケーションスキルを変えていることを明らかにした。調査IIでは,教師用学習指導書による教科ごとに異なった独自の指導法は,子どもたちのコミュニケーションに大きな影響を与え,実態にも反映されることが示唆された。これらは,旧態依然とした教師から子どもたちに向けられた教授・学習過程のありようが浮き彫りとなった形で表れており,授業形態の再構築の必要性を示唆している。調査IIIでは,自己モニター制度を導入した結果,知識や経験をやり取りする話し合い文化が形成されることが明らかになった。また,理科におけるコミュニケーションの特徴を生かした話し合いの長所が他教科に転移することが明らかになった。これは,学習者に内在している学び合う能力を引き出すことが,有益なコミュニケーションスキルを他教科にも伝播させることを示唆している。
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