日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
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24 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 吉田 香織
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿では,教室において分数の意味がどのようにつくられていくのかを明らかにするために,「折る」という子どもの生活経験を用いた分数の授業を分析している。Vygotsky理論に基づく生活的概念と数学的概念,分割量分数,教師の役割という観点から授業を分析した結果,次の結論を得た:1)子どもの生活的概念は概念発達の原動力となっている。2)「分割操作」を中心とした分割量分数Aの意味づくりを基に,そこに暗黙的に存在していた「量」を顕在化する分割量分数Cの意味づくりが行われた。3)教師の果たした役割は,分数の意味づくりを行う適切な場の設定,子どもの生活的概念を理解し,適切なZPDを引き出したこと,適切な教具の使用という3つであった。
  • 古田 豊, 西川 純
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 2 号 p. 11-20
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校低学年・中学年・高学年の理科及び生活科における学び合いの実態を長期間調査し発達的分析を試みた。また,学び合い文化を向上させる実践を行った。調査Iでは,既成グループでの話し合いケースの変化を調査し,話し合いは「安易な合意ケース」になる傾向が強く「経験交換ケース」が現れにくいことを明らかにした。調査IIでは,学び合いの指導を以前から受けている2年生の話し合い活動を調査し,話し合いの発達レベルは学年発達ではなく,学び合いの文化に依存するものであることを明らかにした。調査IIIでは,学習者に内在する学び合い能力を引き出し,自由グループで話し合い・協同作業を行うことで,どの学年も学び合い文化が向上することを明らかにした。調査IVでは,話し合いケースとグループ構成との関連を調査し,「経験交換ケース」で話し合いを行ったメンバーは継続してまた同じグループを組む傾向が強いことを明らかにした。
  • 河﨑 智恵
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 2 号 p. 21-30
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    家庭科にとって意思決定は中核的な概念として重要であり,家庭科教育における意思決定の概念の導入とその能力育成が課題となる。本研究では,意思決定の能力育成を家庭科に導入するための示唆を得ることを目的とし,(1)意思決定が取り上げられている文脈,(2)意思決定プロセスの捉え方,(3)意思決定における価値の取り扱い,(4)メタ判断に対する言及の有無について,日米の教科書の分析を行う。日米の教科書には,共通に自己および家族の自己実現のための意思決定,消費者としての配慮ある合理的な意思決定が認められた。意思決定プロセスは米国の方が現実的で具体的であり,価値についても詳しかった。意思決定の能力の育成方法として,不確実性下での意思決定および意思決定が複雑に積み上げられていく熟慮的な意思決定における,具体的な事例のシミュレーションによる学習方法が有効であり,今後,日本の生徒に適した意思決定の能力育成の方法を開発する必要がある。
  • 松浦 拓也, 角屋 重樹
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 2 号 p. 31-36
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,観察・実験における思考活動と,この思考活動に影響を及ぼす要因の関係を構造方程式モデリング(SEM)を用いて明らかにすることを目的とした。このため,まず,先行研究をもとに観察・実験における思考活動に影響を及ぼす要因として目的把握,思考スキル,粘り強さの3種8項目を選定した。次に,この8項目に思考活動に対する好嫌3項目を加え,計11項目から成る質問紙調査を中学1,2年生134名を対象に行った。調査項目の妥当性を検討するために因子分析を行った結果,因子構造と想定した調査項目の構造が一致した。そこで,観察・実験における思考活動と各要因との関係をSEMにより検討した。この結果,次のことが明らかになった。(1)観察・実験における思考活動に、目的把握と思考スキルが強く影響している。これに対して, (2)観察・実験における思考活動に,粘り強さは直接的にはあまり影響していない。
  • 谷田 親彦, 上田 邦夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 2 号 p. 37-44
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,「ものづくり学習」に取り組む学習者が製作活動に入る前に製作課題に対して考えること(思考)をプロトコル分析を利用して把握することにある。ものづくり経験を有する大学生(21〜23才)から発話を収集したプロトコルデータは,ISM構造法を援用して作成した「ものづくり学習」の教材構造に基づいたカテゴリーにより分類された。その結果,製作計画や構想図,工具の使用やその仕上がりの結果に関する思考が多く行われていた。製作過程の中では,「組立・接合」段階での思考が極めて活発に行われていた。「けがき」や「切断」など製作過程の始めでは構想・設計に関連する思考が表出し,「仕上げ・塗装」など製作過程の終盤では製作品完成後の使い方などに関する思考が活性化されていることがわかった。また,思考シークエンスは,「工具・機器の使用」カテゴリーを思考の起点や終点にする2つのタイプが多く現れた。
  • 太田 國夫, 西川 純
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 2 号 p. 45-54
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,小学校の各教科(理科・国語・算数)での授業の中に継続的に話し合い活動を設け,その様子を長期間にわたりVTRとテープレコーダーで記録し,児童の話し合い活動の様子を分析した。調査Iでは,子どもたちは教科によってコミュニケーションスキルを変えていることを明らかにした。調査IIでは,教師用学習指導書による教科ごとに異なった独自の指導法は,子どもたちのコミュニケーションに大きな影響を与え,実態にも反映されることが示唆された。これらは,旧態依然とした教師から子どもたちに向けられた教授・学習過程のありようが浮き彫りとなった形で表れており,授業形態の再構築の必要性を示唆している。調査IIIでは,自己モニター制度を導入した結果,知識や経験をやり取りする話し合い文化が形成されることが明らかになった。また,理科におけるコミュニケーションの特徴を生かした話し合いの長所が他教科に転移することが明らかになった。これは,学習者に内在している学び合う能力を引き出すことが,有益なコミュニケーションスキルを他教科にも伝播させることを示唆している。
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