抄録
本論文の目的は,高等学校国語科の授業において,「生活」に根ざした切実な学びを実現するために,短期から長期にわたって授業をどのようにデザインするのかを考察することにある。授業は,学習者が様々な「生活」や「生活」の文脈を抱えていることを考慮し,学習者の学びの実態を正確に把握して,デザインすることが望ましい。しかし,これまでの学習者研究において,学びの様相は授業の中だけに限定して捉えられ,一人ひとりの「生活」背景や「生活」の文脈を捨象する傾向にあった。そこで本研究では,ある学習者のライフヒストリーをもとにして,国語科の学びと学習者の「生活」背景とがどのように影響を与え合ったのかを探究し,そこから,高等学校国語科における授業デザインのあり方について示唆を得る。