抄録
平成20年度改訂の小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領では,総則において「言語に対する関心や理解を深め,言語に関する能力の育成を図る上で必要な言語環境を整え,児童(生徒)の言語活動を充実すること。」とされ,音楽科では鑑賞領域で「言語活動の充実」がはかられることとなった。本稿では,日本の学習指導要領における音楽鑑賞の内容と,イギリスのナショナル・カリキュラム及びアメリカの全米芸術教育標準における聴取等の内容を比較・検討することにより,音楽鑑賞に必要な言語力とは何かを明らかにした。その結果,音楽科授業における言語力には,2種類あることがわかった。1つは学習手段としての言語力であり,もう1つは音楽活動の基礎となる言語力すなわち音楽科固有の言語力(音楽リテラシー)である。