ボールやフープ等手具を操作する運動は,子どもたらが非常に興味を示す運動課題である。しかし,手具を操作し慣れていない子どもにとって難しい運動となる場合がある。従って,実際の体育授業の運動指導では,あらゆる子どもの多様な動きの特徴を識別し,評価や指導に結びつく確かな観察視点が不可欠である。そこで本研究は,手具操作運動の指導を効果的に行うための観察視点の明確化を目的に,小学校第3学年によるボールつき動作20秒間のVTRを観察し,「印象観察」及び「比較観察」の2点から動きの分析を行った。その結果,(1)21項目の観察視点を抽出した。その中からボールつき動作の特徴を捉える視点として,印象観察から「安定感・バランス」,「手とボールの接触時間」,「膝の屈伸」の3つを,比較観察から「ボールの高さ」,「開閉脚」の2つを顕著な項目として抽出した。そして,(2)ボールつき動作において巧みに操作することの評価に大きく関与する視点として,「ボールの高さ」と「手とボールの接触時間」の2つを抽出した。また,(3)印象観察では動きの全体的なまとまりが評価され,比較観察では動きの部分的な違いが評価されるという傾向が示された。これらの結果を基に,観察視点を体系化し,指導及び評価に連動させ,総合的な観察モデルを提案する。
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