抄録
ジーンズは,典型的な生徒の日常着である。彼らは好みや状況に応じて,適したジーンズを選び着用している。ジーンズはまた,価格の幅が広く,1000円未満の商品から3万円を超える高級品までが販売されており,低価格のジーンズは開発途上国で生産され,完成品として日本に輸入されている。そこで本研究では,教材としてのジーンズに着目し,グローバル化する消費生活への気づきを促す高等学校家庭科の授業開発を行うことを目的とした。授業は,2010年3月に,東京都立高校1校の第2学年生徒3クラス105名を対象として行われた。ジーンズに関する生徒の意識と実態を把握するために質問紙調査を行った後,4種類の異なる生産国・製造方法のジーンズを教材として家庭科教師が授業を実施した。授業場面や感想文の分析結果から,生徒は商品の製造工程の違いや労働者の状況に気づき,自分たちの消費行動と開発途上国の労働者の生活とのつながりを理解していたことが明らかになった。