本稿は,イタリアの中学校における音楽専門教育の成立とその内容について明らかにするとともに,イタリアにおける音楽専門教育機関の役割やその位置づけを解明することをとおして,イタリアの音楽教育の新たな特質の一端を見い出すことを目的としたものである。設立の背景から,普通教育機関が人間形成を目的として音楽科を扱っているのに対し,音楽院附属中学校は専門家育成を目的として教育を行っており,中学校音楽コースはちょうどその中間に位置づいていることがわかる。中学校音楽コースは,普通教育機関のように人間形成を目的としながらも,音楽に重点を置いた教育を目指しており,さらに音楽については,知識と技術を関連させて教育していこうとしている。つまりこうした教育機関は,音楽教育を中心とした学校教育を展開しており,この誕生は新たな学校教育の在り方の1つとして特筆すべきことである。