抄録
文学的文章の読みにおいては,物語の世界に浸る「体験」とその世界を形作っているその約束事や構造とでもいうべきものの両者に目を向けることを読者が獲得することが重要な要素となる。そこで本研究においては,「語り手」に着目して文学的文章を読むことの意義を小中学生に対する反応分析を基に検討する。「語り手」に着目をした読みを行うことは,文学的文章の構造に目を向けることであり,そのことは深い読みを生み出す契機となるものである。本稿においては具体的な反応を事例としながら「語り手」に着目した読みの意義について検討することで,読者である子どもたちは様々なバリエーションを持った読みを生み出していることが明らかとなったとともに,「語り手」に着目した読みには段階性が見られることを論じた。これらのことは文学的文章の読みの授業において「語り手」に着目した読みを指導することの有効性についてより詳細に考察することであり,さらにそのような読み方をどの段階から計画的に継続して学ばせていくべきかという,カリキュラムを構想する際の重要な手がかりとなるものである。