日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
Print ISSN : 0288-0334
ISSN-L : 0288-0334
小学校教師の体育授業に対するコミットメントを阻害する要因の質的研究
四方田 健二岡出 美則
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 42 巻 4 号 p. 11-23

詳細
抄録
本研究の目的は,小学校教師の体育授業に対するコミットメントを阻害する要因を明らかにすることである。分析データは,大学での体育科の長期研修に参加した小学校教師12名(男性10名,女性2名)を対象とする半構造化インタビューによって収集された。インタビュー・データの質的分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)が用いられた。分析の結果,体育授業へのコミットメントが阻害される要因として,体育指導に関する研修機会の少なさや日常の職務の多忙感,同僚教師の体育授業観などの環境的要因に加え,教師自身の受けてきた体育授業や教員養成課程での学修の不十分さ,体育指導への苦手意識や体育授業観の不明確さといった個人的要因が影響することが示唆された。また,体育指導の改善に向けたコミットメントの低下が研修機会のさらなる減少を招き,体育授業への積極的な取り組みが停滞する悪循環に陥る可能性が示唆された。本研究の結果により,小学校教師の体育授業へのコミットメントを困難にする環境的要因及び個人的要因について,個々の教師の支援にとどまらず,多忙さや学校内の教師の体育授業観の変容といった包括的な視点を踏まえ,教師の授業づくりを支援する職場環境を構築していく必要性が示唆された。
著者関連情報
© 2020 日本教科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top