2023 年 45 巻 4 号 p. 53-59
教科教育学研究者として,特定の教科を研究対象として据えていないものはいないだろう。 そのことで既に我々は自身の研究対象とする教科を突き詰めようとする専門性への欲望と,教科教育学としての総合性との相克の中で価値や意義の自覚や表象と向きあい続けている。教科教育学研究者としての専門性もしくは総合性に特化していくことは学術的には重要であり真摯な方向性であるが,そのことで我々が研究対象とする教科の先にいる子どもたちの健全な成長をないがしろにすることは許されない。このような多層的・重層的な欲望と相克と宿命との折り合いをつけながら学術的研究を進めていくことこそが,教科教育学研究者としての構えであり矜持である。