日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
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原著
  • 金 道煉
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 45 巻 4 号 p. 1-12
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2024/05/24
    ジャーナル 認証あり

     本研究は韓国の高校における選択科目「東アジア史」の教科書をSFL理論に基づいて分析し,その叙述構造が必修科目「韓国史」よりも多元的な視点が具現化されていることを検証するものである。SFL理論はHallidayが唱え,主語と述語の相関関係を分析することによって,話者の意図を論理的・検証的に把握できる可能性をもつ。分析対象は4社の「東アジア史」教科書と,同じ出版社による「韓国史」教科書の計8冊である。分析単元は「東アジア史」の「17世紀の東アジア戦争」で,「韓国史」では「壬辰倭乱」と「丙子胡乱」に該当する。分析の結果,「東アジア史」は,「韓国史」に比べ,より多様な行為主体者を提示し,行為の原因と動機を行為主体者の視点を軸に説く叙述構造をとっていた。これは,過去の行為者の観点を認知する経験が他者の観点を認知し理解する経験に拡張することを促す側面から,歴史教育における市民性育成の実現可能性にもつながる方向であると評価できる。

  • 土肥 大次郎
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 45 巻 4 号 p. 13-22
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2024/05/24
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,社会科社会問題学習の中でも問題構築を扱う授業の開発研究である。社会問題学習において問題構築を扱う授業は,政策問題や論争問題を扱う授業に比べ,研究の蓄積が乏しい。 しかし,社会秩序を批判し問題構築に関わる能力や問題構築活動を批判できる能力は,公民的資質の重要な構成要素である。そして,社会科授業では広い視野から批判的考察を行い,自由を拡げる必要がある。そこで本研究は,先行研究の分析より問題構築を扱う授業の成果と課題を明確にし,その上で先行研究の成果を活かし課題を克服する授業として,広い視野からの「比較制度批判学習としての授業」および「異議申し立て活動批判学習としての授業」の必要性を示した。そして,それぞれ授業構成の論理を示し,授業開発を行い,中学校社会科の小単元「家族政策等」と小単元「水俣病の認知」の学習指導案を提示した。

  • 宮崎 明世, 村瀬 茜
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 45 巻 4 号 p. 23-36
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2024/05/24
    ジャーナル 認証あり

     平成29年小学校および中学校の学習指導要領改訂に伴って創設された「特別の教科 道徳」では,多様な教材の開発が求められ,スポーツを題材として活用することも示されている。国際オリンピック委員会(IOC)による,Olympic Values Education ProgrammeOVEP)は,道徳的価値を学ぶことを目的として作成され,オリンピックの価値には,「特別の教科 道徳」の学習内容にかかわるものが多く含まれる。本研究ではOVEP 日本版の「フェアプレー」を中学校1年生の道徳に導入して授業を行い,授業を通して生徒が価値意識を変容させるかどうかを明らかにすることで,道徳科教材としての可能性を探ることを目的とした。さらに授業の評価を受けて,教材の修正について検討した。その結果,以下のことが明らかとなった。

    )授業を通して,生徒の「フェアプレー」,「敬意・尊重」に関する価値意識が肯定的に変容し, 生徒はこれらの価値に関する考えを深めることができた。

    )指導計画は,映像や画像などを提示して生徒が教材をイメージしやすいようにすること, グループワークの機会を増やすこと,学んだことを日常生活につなげられるようなまとめの方法を工夫することなど,学習指導に関する修正を行うことでより良いものになる。

    OVEP を元にした授業計画を道徳科の授業に導入することによる成果を示し,道徳科にお ける多様な教材の開発として,オリンピック教育教材を活用できる。

  • 丸田 健太郎
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 45 巻 4 号 p. 37-47
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2024/05/24
    ジャーナル 認証あり

     本研究の目的は,国語教育において,「国語」がその対象とされてきたことの問題を指摘すると共に,国語教育の学びの目標や実践の対象として〈学習者の母語〉という視座を設定することである。この目的を達成するための方法として,国語教育研究/実践における「母語」観を言説分析の手法を援用して検討した。その結果,国語教育における従来の「母語」観は制度や学問の枠組みからの影響が強く,学習者の多様性へのまなざしが乏しいことが明らかとなった。 また,一部の先行研究においては,従来のような学問規定に基づく「母語」観から脱却し,学習者の言語経験の蓄積から「母語」を見とることの必要性が指摘されていることが明らかとなった。以上を踏まえ,本研究では従来の「母語」観に代わる視座として〈学習者の母語〉概念を提案した。これは,学習者の言語経験に基づくことばの総体であり,学習者の多様な背景を包摂するための視座になると考える。

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