本研究の目的は,「不平」場面における日本人英語学習者の相互行為を「前置き」の使用の観点から調査し,学習者の語用論的能力及び相互行為能力の発達と指導に示唆を与えることである。「不平」は人間関係を危険に晒しうるリスクが高い行為であり,「不平」を円滑に遂行するためには,説明等の「前置き」を使用できるかが重要であるとされている。しかし,日本人英語学習者を対象に,「不平」場面の相互行為における「前置き」の使用を調査した先行研究はほぼ見当たらない。本研究は,中級日本人英語学習者7名を対象として「不平」場面の相互行為をロールプレイにて誘出し,応用会話分析を用いて学習者の「前置き」の使用を分析した。その結果,先行研究が示すように学習者の目標言語習熟度が「前置き」の使用に影響した。しかし,本研究は,「不平」を行う場面に対する学習者の認識の違いも「前置き」の使用に影響を与えることを示唆した。