2024 年 47 巻 2 号 p. 1-12
本研究は,小学校図画工作科における各刃物の扱いについて,戦前,戦中の国定教科書との関係に注目しながら,批判的に考察したものである。戦前(尋常・高等小学校),戦中(国民学校),戦後(学校教育法における小学校)の教科書,学習指導要領,同解説・指導書を主な資料にしている。明治後期の国定教科書『小学校教師用手工教科書』によって工作教育の内容がおよそ定まり,戦中の国定教科書『エノホン』,『初等科工作』をもとに戦後の工作教育がはじまった。現在の1学年でのはさみ,中学年での小刀,のこぎり,高学年での糸のこぎり,といった刃物の扱いは,80年ほど前の戦時下で決められたことが,その後,十分な検討がなされないまま続けられてきたものといえそうである。