本研究の目的は,アカデミックな場面における英語習熟度が初級レベルの日本人大学生による不平の特徴を,第一言語(日本語)及び第二言語(英語)を比較・分析することで明らかにすることであった。日本人大学生139名を対象に,不平を伝えるか否かを問う項目と不平を誘出する項目から成るオンライン談話完成テストを実施し,日英両言語におけるデータを収集した。収集した不平データに対して(1)不平を伝えない判断(opt out)の有無,(2)opt out の選択に与える要因,(3)不平ストラテジーの使用傾向,の3観点から比較・分析を行なった。分析の結果,英語で伝える者は日本語でも伝え,英語で伝えない者は日本語でも伝えない判断をする傾向があり,日英における不平ストラテジーの使用傾向も概ね類似しているため,使用言語による影響が少ないことが明らかになった。したがって,両言語(日英)での言語表現に関する語用論的指導を行うことで,語用論的な気づきが促され,発話行為の断念(opt out)を防ぐこともできるため,両言語における言語表現の向上の可能性が示唆された。