2024 年 47 巻 3 号 p. 39-49
社会科におけるインクルージョンは,ニーズ尊重と市民育成を両立するために,学習内容の調整を課題としている。本研究は,内容調整の方略が開発されているアメリカ合衆国の社会科に注目し,ニーズ尊重と市民育成の学習内容を両立させるモディフィケーションを分析対象とした。その指導書『原理と応用』の分析から,①内容,②プロセス,③評価の三観点で学習内容を調整し,「形式的」かつ「実質的」な内容調整を行なうことを明らかにした。これら二つの調整は,「学習支援」と概念指導の「内容の深まり」を通して,「変革」志向の市民育成を実現している。したがって,インクルージョンに基づく社会科カリキュラムの内容調整は,障がいのある子どもを支援するとともに,すべての子どもを対象とした「変革」を目指す市民育成に資する意義がある。