抄録
琉球列島では1998年に大規模な造礁サンゴ類の白化現象がおこった。われわれは、鹿児島県喜界島において白化に対する造礁性サンゴの耐性について詳細に検討した。その結果、ミドリイシ科のミドリイシ属とハナヤサイサンゴ科のハナヤサイサンゴ属の致死率が最も高かった。一方、ヤスリサンゴ科のアミメサンゴ属およびヒラフキサンゴ科のシコロサンゴ属は、白化の影響をほとんど受けていなかった。これらの結果は、これまでに他のインド・太平洋地域から報告されている結果とよく一致する。このような分類群による白化への耐性の違いは、各分類群の系統と関連していると思われる、すなわち、科レベルでは、出現した地質時代が古いものほど白化に対して強い耐性を有するのに対し、地質学的に新しい時代に出現したものほどダメージが大きいという傾向が読みとれた。また属レベルでは、白化に対して強い耐性を示したもののほとんどが、地球史の中でも温暖な時期 (温室期) に出現した可能性が大きい。