抄録
沖縄県宮古島保良湾のサンゴ礁海水20Lを汲み上げ、ポリカーボネイト製の容器に入れ、暗所で3ヶ月以上静置培養した。培養期間中海水中の有機態炭素濃度は徐々に減少し、難分解性の有機態炭素濃度と考えられる値に漸近していった。初期の全有機態炭素に対する易分解性有機態炭素の割合は、サンゴ礁内海水で約30%、礁外海水で10%ほどであった。また海水中の栄養塩濃度は、有機物が分解するにつれて増加していった。細菌数は、培養開始後1日でおよそ2倍となったものの、その後徐々に減少していった。易分解性有機態炭素の分解速度は、20mmol C/m2/dayで、礁原上のサンゴ礁生物群集の呼吸速度と比べると桁違いに小さかった。このことは、サンゴがサンゴ礁生態系の炭素動態の主要な要素であることを示唆する。さらに礁内の難分解性有機態炭素濃度が礁外のそれと比較して低いことは、礁内では礁外よりも有機態炭素が沈降粒子等へ吸着されやすく、サンゴ礁は炭素吸収源として機能している可能性も示唆する。