抄録
海域に流入する酸性赤色土が、海水に対して化学的にどんなインパクトを与えるかを研究した。特にpH, Na+, K+, Ca2+, Mg2+, Al3+, 溶存ケイ酸に注目した。海水のpHは赤土量と共に減少し、4.06まで下がった。Al濃度はpHの低下に伴って、通常海水の0.0256meqL-1から5.95meqL-1まで増加した。H+とAl濃度が増加するにつれて、K+, Ca2+, Mg2+は減少した。ただ、Na+はそれほど変化しなかった。増加したH+とAlの合計濃度と減少したNa+, K+, Ca2+, Mg2+の合計濃度の間には、強い相関があった。このことは、赤土と海水間でイオン交換反応が起っていることを示している。それからpH低下につれて、溶存ケイ酸濃度も増加した。このことは、赤土自身が自分から出ていくH+によって風化を進めていることを意味している。赤土の海域への流入は、物理的悪影響だけでなく、化学的にも海域生態系に悪い影響を与えているといえる。