日本サンゴ礁学会誌
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8 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • Ranjeet Bhagooli, 日高 道雄
    2006 年 8 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サンゴの白化を引き起こす最初のステップは褐虫藻の光化学系II (PSII) の損傷であるかを調べるために、シワリュウモンサンゴの褐虫藻において、PSIIの活性を示すPSII最大量子効率 (Fv/Fm) またはアクティブPSII中心 (Fv/Fo) とPSIIの下流での電子の流れの指標である最大電子伝達速度 (ETRmax) の関係を調べた。次に、高温 (33.5℃) または強光 (1030μmol quanta m-2 s-1) 1時間処理後および6時間回復後のこれらパラメータの変化を調べた。暗黒下で1時間高温処理すると、Fv/Fmは変化しなかったが、ETRmaxは有意な、しかし回復可能な低下を示した。1時間の強光処理は、Fv/Fmを低下させたが、ETRmaxには影響しなかった。強光+高温処理は、Fv/Fmをより顕著に低下させ、ETRmaxも有意に低下させた。同時にPSIIにおける熱消散を示す非光化学的消光 (NPQ) が一時的に上昇した。Fv/FmETRmaxも6時間では完全に回復しなかった。PSII反応中心のD1タンパクの合成を阻害するクロラムフェニコールを用いた実験の結果、Fv/Fmの少なくとも60%またはアクティブPSII中心の少なくとも30%が機能していれば最大電子伝達速度は維持された。褐虫藻光合成系の高温による損傷は、最初にPSII以降の要素、おそらく炭素固定回路、に生じ、PSIIの損傷は2次的なものであることが示唆された。
  • Mohamed Mkadam Kombo, Said Suleiman Bakari, 新城 竜一, 渡久 山章
    2006 年 8 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    海域に流入する酸性赤色土が、海水に対して化学的にどんなインパクトを与えるかを研究した。特にpH, Na+, K+, Ca2+, Mg2+, Al3+, 溶存ケイ酸に注目した。海水のpHは赤土量と共に減少し、4.06まで下がった。Al濃度はpHの低下に伴って、通常海水の0.0256meqL-1から5.95meqL-1まで増加した。H+とAl濃度が増加するにつれて、K+, Ca2+, Mg2+は減少した。ただ、Na+はそれほど変化しなかった。増加したH+とAlの合計濃度と減少したNa+, K+, Ca2+, Mg2+の合計濃度の間には、強い相関があった。このことは、赤土と海水間でイオン交換反応が起っていることを示している。それからpH低下につれて、溶存ケイ酸濃度も増加した。このことは、赤土自身が自分から出ていくH+によって風化を進めていることを意味している。赤土の海域への流入は、物理的悪影響だけでなく、化学的にも海域生態系に悪い影響を与えているといえる。
  • L. P. van Ofwegen, Y. Benayahu
    2006 年 8 巻 1 号 p. 25-37
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    A new genus of paralcyoniid soft corals (Octocorallia: Paralcyoniidae) from the Indo-West Pacific is described and named Ceeceenus. The new genus is compared with the related genera Paralcyonium Milne Edwards, 1850 and Studeriotes Thomson & Simpson, 1909. Four new species are described and included in the new genus. They were found in Thailand, Japan, Palau, Papua New Guinea and Tonga.
  • E. A. Titlyanov, T. V. Titlyanova, I. M. Yakovleva, O. S. Sergeeva
    2006 年 8 巻 1 号 p. 39-50
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Regeneration of artificial injuries on scleractinian corals of massive colonies Porites lutea and branching Porites cylindrica and algal/coral competition on newly formed substrate are the subject of investigation. It was shown that the injured coral areas recovered at three stages (1) coral tissue recovery with the formation of a border between the regenerating live tissue and dead area, (2) growth and expansion of the live tissue on the substrate, and (3) new polyps development on the healed area. At the first stage of the regeneration, the rate of lesion healing was highest; it varied in respect to injury type and averaged 0.2-0.05 and 0.1-0.02mm day-1 for P. lutea and P. cylindrica, respectively. The regeneration rate mostly depended on morphology of corals and injury type. Coral entombed spores and thalli fragments of algae settled onto partially damaged live tissue and skeleton. At the second stage, the rate of lesion healing sharply decreased and varied from 0.1 to 0.03mm day-1 for P. lutea and from 0.05 to 0.02mm day-1 for P. cylindrica. Position of the injuries within the colony, light intensity, as well as the composition and abundance of algae and animals settled onto the damaged areas had a significant effect on the rate and duration of the recovery process. The algae growing on dead areas of the injuries acted as a physical and in rare cases as a chemical impediment for expansion of live tissue on the available substrate. At the second stage of healing, the live tissue overgrew twenty two algal species settled onto the lesions at winter and spring seasons. At the third stage of the regeneration, the recovery depended on external and internal conditions promoting the growth of coral polyps.
  • 北田 幸男, 藤村 弘行, 渡慶次 亮子, 大森 保
    2006 年 8 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    沖縄県瀬底島のサンゴ礁において、大気-海水間のCO2フラックスと海水中の二酸化炭素分圧を測定し、気体交換係数へのさまざまな撹乱の影響を議論した。CO2フラックスは-1.0から1.3mmol m-2h-1まで変化し、海水中のCO2分圧の変動と一致した。大気のCO2は昼間に海水へ吸収され、夜間に放出された。これは、主に群集の光合成と呼吸によるものである。チャンバー法によって得られた気体交換係数は風速依存の気体交換係数に比べて大きかった。気体交換係数は風速を2.8m s-1としたときに過去の研究 (Wanninkhof 1992; Liss and Merlivat 1986) で見積もられた値の5倍と30倍の高い値が本研究では得られた。我々の値は風速と乱流の両方の影響を考慮した Komori and Shimada (1995) に近い値が得られた。そして、そのことはサンゴ礁では風速の影響以外に乱流やその他の因子の影響が気体交換係数の見積もりに重要であるということを示している。
  • 中村 洋平, 寺島 裕晃, Samyan Chettanand, 佐藤 直司, 井田 齊
    2006 年 8 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    インド洋西部に位置するモーリシアス島沿岸において, ウミジグサおよびボウバアマモが優占する海草藻場 (以下, 藻場) に出現する魚類相とその食性を調査した。両藻場で採集された魚類37種 (16科) のうち, 前者の藻場に出現した魚類は26種 (14科) で, 後者の藻場に出現した魚類は26種 (13科) であった。また, どちらの藻場にも出現する魚類は15種 (10科) であった。採集された個体の多くは稚魚で, 種数と個体数ともに優占する科は, テンジクダイ科, ヒメジ科, ベラ科, ブダイ科,ハゼ科であった。食性群では, 両藻場ともに底生無脊椎動物食魚が最も多く, これらの魚類は主にハルパクチクス類やヨコエビ類を摂餌していた。
  • 阿部 和雄
    2006 年 8 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    沖縄県石垣島内の3河川 (宮良川、名蔵川、吹通川) 河口域において、表層堆積物中のカドミウム含量に関する予備的調査を行った。堆積物試料は、径0.25mm以下のものについて酸による高温・高圧分解を行い、カドミウムおよびリンを定量した。その結果、堆積物試料中でのカドミウムおよびリンは宮良川からの試料が高濃度を示し、畑地等の陸域からの供給が示唆された。また、宮良川河口の巻貝類中のカドミウム濃度も比較的高く、このことは定性的な解釈に留まるが、高濃度のカドミウムを含む土壌を体内へ取り込むことに起因するものと考えられる。
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