日本サンゴ礁学会誌
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造礁サンゴ褐虫藻の光化学系II最大量子収率と最大電子伝達速度の高温による阻害と回復について
Ranjeet Bhagooli日高 道雄
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2006 年 8 巻 1 号 p. 1-11

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抄録
サンゴの白化を引き起こす最初のステップは褐虫藻の光化学系II (PSII) の損傷であるかを調べるために、シワリュウモンサンゴの褐虫藻において、PSIIの活性を示すPSII最大量子効率 (Fv/Fm) またはアクティブPSII中心 (Fv/Fo) とPSIIの下流での電子の流れの指標である最大電子伝達速度 (ETRmax) の関係を調べた。次に、高温 (33.5℃) または強光 (1030μmol quanta m-2 s-1) 1時間処理後および6時間回復後のこれらパラメータの変化を調べた。暗黒下で1時間高温処理すると、Fv/Fmは変化しなかったが、ETRmaxは有意な、しかし回復可能な低下を示した。1時間の強光処理は、Fv/Fmを低下させたが、ETRmaxには影響しなかった。強光+高温処理は、Fv/Fmをより顕著に低下させ、ETRmaxも有意に低下させた。同時にPSIIにおける熱消散を示す非光化学的消光 (NPQ) が一時的に上昇した。Fv/FmETRmaxも6時間では完全に回復しなかった。PSII反応中心のD1タンパクの合成を阻害するクロラムフェニコールを用いた実験の結果、Fv/Fmの少なくとも60%またはアクティブPSII中心の少なくとも30%が機能していれば最大電子伝達速度は維持された。褐虫藻光合成系の高温による損傷は、最初にPSII以降の要素、おそらく炭素固定回路、に生じ、PSIIの損傷は2次的なものであることが示唆された。
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