抄録
サンゴの白化を引き起こす最初のステップは褐虫藻の光化学系II (PSII) の損傷であるかを調べるために、シワリュウモンサンゴの褐虫藻において、PSIIの活性を示すPSII最大量子効率 (Fv/Fm) またはアクティブPSII中心 (Fv/Fo) とPSIIの下流での電子の流れの指標である最大電子伝達速度 (ETRmax) の関係を調べた。次に、高温 (33.5℃) または強光 (1030μmol quanta m-2 s-1) 1時間処理後および6時間回復後のこれらパラメータの変化を調べた。暗黒下で1時間高温処理すると、Fv/Fmは変化しなかったが、ETRmaxは有意な、しかし回復可能な低下を示した。1時間の強光処理は、Fv/Fmを低下させたが、ETRmaxには影響しなかった。強光+高温処理は、Fv/Fmをより顕著に低下させ、ETRmaxも有意に低下させた。同時にPSIIにおける熱消散を示す非光化学的消光 (NPQ) が一時的に上昇した。Fv/FmもETRmaxも6時間では完全に回復しなかった。PSII反応中心のD1タンパクの合成を阻害するクロラムフェニコールを用いた実験の結果、Fv/Fmの少なくとも60%またはアクティブPSII中心の少なくとも30%が機能していれば最大電子伝達速度は維持された。褐虫藻光合成系の高温による損傷は、最初にPSII以降の要素、おそらく炭素固定回路、に生じ、PSIIの損傷は2次的なものであることが示唆された。