抄録
石灰窒素によるスクミリンゴガイ防除を組み入れた湛水直播栽培技術の確立に向けて, 水稲種子への酸素発生剤被覆が石灰窒素による出芽障害に与える影響について, ポット試験による出芽試験, およびシャーレでの発芽試験により調査した. その結果, 酸素発生剤を被覆した場合, 石灰窒素散布土壌中に播種した種子の幼芽伸長が促進される傾向にあった. また, 酸素発生剤を混合した石灰窒素溶液ではカルシウムシアナミド濃度が減少したことから, 酸素発生剤は石灰窒素を分解する作用があることが解った. 次に石灰窒素散布土壌の播種前の代かきの有無が出芽に与える影響をポットによる出芽試験で調査した. 播種前の代かきにより湛水中のカルシウムシアナミド濃度が低下し, 出芽障害が抑えられた. また, 圃場条件下での出芽試験の結果, 酸素発生剤被覆種子であっても窒素量8g/m2の石灰窒素散布土壌で出芽率の低下がみられた. 以上の結果, 石灰窒素によるスクミリンゴガイ防除を湛水直播栽培において実施する場合は, 播種前に代かきを行う作業体系の播種法が適しており, スクミリンゴガイ防除と出芽障害回避の双方の視点から併せみて, 窒素量4g/m2程度の石灰窒素散布が適当であると結論された.