抄録
1992年から1996年にわたる5年間, 合計9作期の多肥条件 (窒素18 g m-2) での栽培試験をもとに, 半矮性インド型水稲品種タカナリの登熟期間の乾物生産および転流に及ぼす気温と日射量の影響について, 日本型品種コチヒビキを対照として検討した. タカナリの登熟期間の平均気温は27.6∼20.0°C, 平均日射量は18.8∼11.7MJ m-2 day-1の範囲で大きな年次変動が認められた. タカナリの登熟期間の地上部重増加量は1994年5月中旬移植区が最大で987 g m-2を記録し, 同様に粗玄米重もこの試験区で最大値となる990 g m-2を記録した. タカナリの地上部重増加量には有意な試験区間差は認められなかったが, 平均個体群成長速度 (CGR) を算出すると, 有意な試験区間差が認められた. タカナリのCGRは平均気温·日射量の双方と有意な正の相関を示し, 平均日射量を一定として求めたCGRと平均気温の偏相関係数も正の値を示した. 両品種とも, 茎葉乾物重の減少量から推定した転流量には有意な試験区間差は認められなかった. タカナリの転流量は平均気温および地上部重増加量と有意な負の相関を示したが, 偏相関係数の比較から, 気温が転流に及ぼす影響は間接的であると推察された. タカナリの粗玄米重が地上部重増加量と有意な正の相関を示し, 転流量とは有意な相関を示さなかった理由として, 地上部重増加量を平均すると転流量の5.37倍と大きかったことが推定された. 高温条件で高い乾物生産能力を示し, 茎葉の非構造性炭水化物蓄積量も安定して多いタカナリは, 生産力向上のためのモデル品種として有用であると推察された.