日本作物学会紀事
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品質 · 加工
九州北部におけるコムギ粉の色相の年次間変動とその要因
佐藤 大和内村 要介尾形 武文松江 勇次陣内 暢明
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2003 年 72 巻 4 号 p. 409-417

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抄録
粉の色相が安定して優れる高品質コムギの生産技術を確立するために, 粉の色相の年次間変動の実態を明らかにするとともに, 粉の色相の変動要因を子実の容積重, 製粉特性および登熟期における降水量との関係から解析した. 粉の色相は容積重, 最高粘度, タンパク質含有率および登熟後期 (成熟期前1∼15日) の降水量との間に有意な相関関係が認められ, 容積重が重く, 最高粘度が高く, タンパク質含有率が低く, 登熟後期の降水量が少ないほど優れた. なかでも容積重は粉の色相との相関係数が最も大きく, 粉の色相を簡便に評価できることが示唆された. また, 容積重は登熟後期の降水量との間に負の相関関係が認められ, 雨濡れ程度を示す指標となることが判明した. さらに, 重回帰分析によって解析した結果, 粉の色相は成熟期前3∼6日の降雨によって最も大きな影響を受けた. 以上の結果から, 安定した粉の色相のコムギ粉を生産するためには, 登熟後期の耐雨性の向上が重要であることが示唆され, 登熟後期の雨濡れによる品質低下の小さい品種の選定, 成熟期前3∼6日の積算降水量の少ない5月中に収穫が可能な早生コムギ品種の作期前進化技術が有効であると考えられた.
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© 2003 日本作物学会
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