日本作物学会紀事
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品種 · 遺伝資源
北海道におけるマメ類とコムギ品種の普及速度と寿命
佐藤 久泰沢田 壮兵伊藤 繁
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2003 年 72 巻 4 号 p. 418-423

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抄録
品種の育成方法や育成過程については多くの報告があるが, 育成後の普及過程についての報告は非常に少ない. 本研究では大規模な畑作農業が行われている北海道におけるマメ類とコムギ品種の普及過程について分析した. 普及後の品種別作付面積が明らかなダイズ, アズキ, インゲンマメおよびコムギの4作物合計29品種を対象にした. 年次毎の普及率をロジスティック曲線にあてはめ, 天井水準 (普及率の最高値) と普及速度を求めた. 普及過程には各作物特有の傾向はみられず, 品種ごとに特徴があった. 供試した品種の普及率の推移は3つのパターンに分類された. 第1のパターンは, 普及開始とともに急激に普及し, 天井水準が43∼98%と高い値を示したグループで, 4作物の基幹品種8品種が含まれていた. 第2のパターンは普及直後の普及率が低く, また天井水準も20∼34%と低かったが, 長い寿命を保っている品種である. 第3のパターンは天井水準が5∼15%と低い品種で, しかし一部を除き長い寿命を保っていた. このグループには14品種と最も多くの品種が含まれていた. 1品種を除く28品種は普及開始後4年以内に普及率が5%に達していた. 天井水準と5%到達年数には負の相関関係があり, 普及開始後の普及率が高い品種ほど天井水準が高かった. しかし, 普及速度と天井水準には有意な相関関係はみられなかった. 寿命が12年と短い品種もあったが, ダイズでは30年以上, アズキ, インゲンマメおよびコムギで25年以上の長命品種が現在も普及している.
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© 2003 日本作物学会
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