抄録
テンサイ根腐病に対するテンサイ (Beta vulgaris L. ) の根冠部および地上部における部位別の抵抗性の発現を抵抗性系統と感受性系統による交配集団を用い, 圃場接種により調査した. 調査部位は, 根冠部の表皮, 縦断面から見た内部組織, また, 地上部の発病を発病面積ならびに発病指数により個体別に評価した. その結果, 表皮発病面積の広義の遺伝率は67.0%であり, F1集団およびF2集団は優性効果が認められず, 中間親を中心とした連続的分布を示したため, 表皮の抵抗性が量的遺伝形質であると考えられた. 内部発病は, 表皮発病に起因するが, 抵抗性系統を用いたF1集団およびBC1F1集団の縦断面発病面積は, 表皮発病面積にかかわらず小さく, 抵抗性側に偏る優性効果が認められた. 縦断面発病面積の広義の遺伝率は98.6%と高く, また, F1集団, BC1F1集団およびF2集団の分離検定から, 内部組織の抵抗性を支配する単一の優性遺伝子の存在が示唆された. 一方, 圃場における地上部の抵抗性は, 根冠部の表皮の抵抗性と同じ遺伝子によるものと考えられ, 地上部発病指数の調査により根腐病抵抗性に関する一次評価の可能性が示唆された.