日本作物学会紀事
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イネもみ枯細菌病発生水田における水稲の収量ならびに根系について
片野 學川浪 正治
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2004 年 73 巻 1 号 p. 48-57

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抄録
作物における病害虫発生は作物体の不健全さの結果であり, その不健全さは発生以前の作物体各器官の形態に残されていると考えられる. イネもみ枯細菌病が一筆全面にわたって発生した水田と発生しなかった2水田における水稲の収量, 収量構成要素, 穂相, 節間長, 根系形態, 冠根数, 分枝根形成等を観察した. イネもみ枯細菌病発生水田の収量は550g/m2であり, 対照田の収量:649g/m2の85%であった. 減収要因はm2当たり穂数, 1穂籾数ではなく, 登熟歩合の顕著な低下であった. 1株を構成する各茎における発病程度は様々であったが, 同一種籾から発生した1個体茎内においても, 罹病茎と罹病しなかった健全茎とが混在していた. このことは, 本病が種籾に由来するという従来の知見とは異なっていた. また, 発生水田における玄米中の全窒素含有率は有意に高くなっていた. さらに, 代表株の根群を構成する伸長した冠根数には差が見られなかったが, 発生水田のいじけ根数は対照田に比べ顕著に多くなっていた. 出根要素別に見たいじけ根率は移植3週間後には差が生じており、イネの不健全さは生育初期に認められた. 発生水田では対照田に比べ, 2次根の出現密度が高くなっていた. 以上のように, イネもみ枯細菌病発生は, 出穂期以降, 籾部分における病徴の発現として認められるが, いじけ根の多発, 作土中を伸長した冠根における高密度の2次根の出根, 加えて, わら重の増大など, 罹病状態は, 移植直後から醸成されていたのではないかと考えられる.
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© 2004 日本作物学会
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