日本作物学会紀事
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栽培
不耕起・無代掻き水田で栽培された水稲の乾物生産特性
―耕起・代掻き水田で栽培された水稲との比較―
本林 隆成岡 由規子和田 誉平沢 正
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2004 年 73 巻 2 号 p. 148-156

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抄録

不耕起・無代掻き水田で栽培された水稲と耕起・代掻き水田で栽培された水稲の生育および乾物生産過程を1997年~1999年の3年間にわたり比較し, それらの相違する要因を検討した. 3ヶ年とも両水稲の玄米収量, 収穫期地上部乾物重には違いはみられなかったが, それぞれの成立過程には相違が認められた. 収量構成要素は1997年, 1998年では不耕起・無代掻き栽培水稲はm2あたり籾数が耕起・代掻き栽培水稲に比べて少ない傾向があったものの, 千粒重は大きかった. また, 1999年は, 不耕起・無代掻き栽培水稲はm2当たり籾数がやや多かったにもかかわらず, 登熟歩合は高い傾向がみられた. 不耕起・無代掻き栽培水稲の地上部乾物重は耕起・代掻き栽培水稲に比べ, 生育前期には小さく, 個体群成長速度(CGR)も小さい傾向がみられたが, 生育後期にはCGRが大きくなったことにより, 収穫期の地上部乾物重には相違がなくなった. 生育前期に不耕起・無代掻き栽培水稲のCGRが小さいことには, 耕起・代掻き栽培水稲に比べ葉面積指数(LAI)が小さいことが関係していた. これに対し, 生育後期に不耕起・無代掻き栽培水稲のCGRが大きくなったのはNARが耕起・代掻き栽培水稲に比べて大きいことに起因していた. 不耕起・無代掻き水稲は耕起・代掻き栽培水稲に比べ生育後期は葉身の窒素含量が高く維持されることによって個葉の光合成速度が大きく, このことがNARの高い要因であると考えられた. また, 不耕起・無代掻き栽培水稲では, 生育後期に茎基部における出液速度と根から地上部に送られるサイトカイニン活性が高い傾向が認められた.

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© 2004 日本作物学会
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