秋播性コムギ「イワイノダイチ」の早播き栽培に適した播種量を明らかにすることを目的として, 疎播がイワイノダイチの生育・収量に及ぼす影響を2カ年にわたって調査した. 乾物生産特性をみると, 疎播(80粒/m2)は標播(160粒/m2)と比較して最高分げつ期の茎数が少なく, LAI, 乾物重も小さかったが, 開花期のLAI, 全乾物重, およびシンクサイズは同等であった. このことから, 疎播は開花期の段階で標播と同等の子実重を得る条件を備えていると判断された. 開花期の穂・葉・茎の形態的特性をみると, 疎播は標播と比較して, 稈長, 節間数, 節位別節間長には大きな差異は認められなかったが, 穂および葉の形態的形質の値が大きく, 節位別の節間直径も太かった. さらに疎播は標播より登熟期間のSPAD値が高く推移した. その結果, 疎播は標播と比較して穂数は少ないが, 1穂粒数は多く, 千粒重は同等であり, 子実重は同等か, やや大きかった. さらに, 疎播は標播よりも耐倒伏性が優れていることが示唆された. 以上の結果から, イワイダノダイチの早播き栽培においては疎播が標播より適していることが示唆された.