日本作物学会紀事
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栽培
窒素施用法の違いが夏ソバの生育・収量に及ぼす影響
―乾物生産と窒素吸収に着目して―
杉本 秀樹
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2004 年 73 巻 2 号 p. 181-188

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抄録
西日本における夏ソバ栽培の合理的窒素施用技術の確立に資するため, 転換畑において基肥窒素の施用量を変えた場合, 開花期の窒素追肥ならびに緩効性肥料を施用した場合における生育・収量について乾物生産, 窒素吸収に着目して検討した. 硫安を窒素成分量で0, 2, 4, 10g/m2施用したとき, 乾物重, 窒素吸収量ともに施用量が多いほど大となった. 個体群成長速度は, 成熟期近くまで葉面積の展開と密接な関係がみられた. 子実重は窒素施用量4g/m2までは個体当たり粒数が増大して増えたが, 10g/m2区では4g/m2区とほぼ等しかった. 同区では, 開花・登熟後期でも乾物分配率が茎で高く, 収穫指数および子実に対する窒素利用効率(子実乾物重/窒素吸収量)が著しく低かった. 硫安追肥区は, 窒素施用量の等しい基肥区より乾物重, 窒素吸収量, 個体当たり粒数が小で, 肥料窒素利用率も低く増収効果はなかった. 緩効性肥料区(70日タイプ)では, 生育前半は葉身窒素含有率, 個体群成長速度とも低かったが, 生育後半になるといずれも高くなった. また, 緩効性肥料区では草丈が低く倒伏抵抗性は高まったが, 増収効果はみられなかった. 西日本における夏ソバ栽培は, 気温が低い春に播種するため, 基肥による初期生育の促進が重要と考えられた. 比較的地力の高い転換畑においても窒素施用は効果があり, 4g/m2が適当と判断された.
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© 2004 日本作物学会
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