抄録
1998年の異常高温年に発生した極早生水稲品種とさぴかの異常(不時)出穂の発生要因を明らかにするため, 夏至前後(長日)および秋分以降(短日)の自然日長下で, 25℃および20℃(恒温)区を設け, 株まきポットで養成した苗の幼穂分化, 発育を検討した. 播種からの積算温度でみた苗の幼穂分化時期は, 長日区, 短日区ともにとさぴかとその交配母本である高育27号が早かった. また, 苗の幼穂分化後における幼穂伸長速度の日長, 温度区間差は, 播種からの積算温度で比較した場合より, 基準温度を10℃とした有効積算温度でより小さかった. そして, とさぴかでは苗の幼穂分化, 発育への日長の影響は小さく, 播種からの有効積算温度が301~348℃日で幼穂形成期(平均幼穂長1mm)に達することが判明し, この時の苗の葉齢は5. 3~5. 7で, 25℃条件では主稈出穂の20日前であった. さらに, とさぴかは北海道育成品種に比べ, 最終主稈葉数が少ないため, 早晩性を示す播種から止葉展開までの有効積算温度が低く, 感光性, 感温性および基本栄養生長性程度も比較的小さいことが明らかとなった. また, これらの特性は高育27号と類似することが判明した.