日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
栽培
窒素組成の異なる培養液を用いてマット育苗した草姿が異なる水稲苗の植え傷み
江原 宏川嶋 みず恵森田 脩末松 優
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 73 巻 3 号 p. 247-252

詳細
抄録

窒素組成の異なる培養液を用いてマット育苗した草姿が異なる水稲苗の植え傷みを比較するモデル実験を行った. コシヒカリの催芽種子を, 不織布を敷いた育苗ベッドに播種した. 播種後7日間は水道水のみ, 8日目からはNH4-N:NO3-N=28%:72%とした培養液を与えた後, 15日目から1区ではそのままの培養液で, 2区では窒素源をNH4-Nのみとして21日目まで育苗した. その後, 根を基部から1cm残して切り揃えた部分剪根処理と全ての根を切った全剪根処理を行い, スチロール板を支持体として水耕装置に移植した. 移植時の苗は1区に比べて2区で草丈が約10%小さく, 最長根長は約61%短かった. 移植後の生長を同一育苗条件で比較すると, 両区とも剪根割合が大きいほど, 草姿を表すほとんどのパラメーターが小さい傾向が見られたものの, それらの減少程度は2区で小さかった. また, 同一剪根処理で比較すると, 根長は移植後5日, 10日目を通じて両剪根処理とも2区で長かった. さらに, 乾物重は両剪根処理とも2区で大きい傾向にあり, 特に全剪根処理で顕著であった. 草丈は, 両剪根処理とも移植後5日目では1区で大きかったが, 10日目になると1区と2区の差はほとんど見られなくなった. これらの結果から, 移植時の窒素源の差異によってもともと根が短い苗では, 剪根処理の移植後5日目, 10日目の影響が小さく抑えられ, 剪根ストレスからの回復が早く進行していたと考えられた.

著者関連情報
© 2004 日本作物学会
次の記事
feedback
Top