耐湿性には複数の要因が関与しており, そのうち湛水条件下において地表に不定根を形成する能力は過剰水分に対する重要な適応要因のひとつと考えられている. トウモロコシ自殖系統とその近縁種のテオシントの幼植物について, 湛水条件下において地表に生じる不定根量の変異を調査すると共に2つの交雑集団を用いて不定根形成能の遺伝解析を行った. 幼植物を2週間にわたって湛水処理を行った際の地表に生じる不定根の量には, 供試した43系統において系統間差異が認められ, テオシント2系統の不定根形成量はいずれも多かった. 不定根形成量の反復間相関係数は0.749と1%水準で有意であり, 再現性が認められた. 不定根が形成されにくいトウモロコシ自殖系統B64と形成されやすいテオシントZea mays ssp. huehuetenangensisのF2, F3交雑集団, およびB64と不定根が形成されやすいトウモロコシ自殖系統Na4のF2, F3交雑集団のいずれにおいても不定根形成量は連続的な変異を示し, 複数の遺伝子に支配されていると考えられた. B64とZ. mays ssp. huehuetenangensisおよびB64とNa4のF2とF3の不定根形成量の相関係数から推定した遺伝率はそれぞれ0.357と0.405, 回帰係数から推定した遺伝率はそれぞれ0.139と0.301であった.