抄録
テンサイ黒根病は, 肥大した根部に黒色の根腐れ症状や粗皮症状を引き起こす化学的防除が困難な土壌病害である. これまで, 黒根病抵抗性の選抜および評価は, 現地の発病ほ場を用いて行ってきたが, 発病程度に年次間差が大きく, 再現性の問題が認められていた. そこで, 本実験では, 安定的に黒根病抵抗性を検定するための遊走子を用いた人為接種法を検討した. 試験区は遊走子区, 多灌水区および対照区の3処理区を設け, 黒根病抵抗性が異なる3品種を用いて試験した. その結果, 遊走子区は品種の平均黒根症状指数が1.8と対照区より明らかに高かった. 一方, 多灌水区の平均黒根症状指数は0.7と低く, 多灌水処理による影響は小さかった. 遊走子区における供試材料の黒根症状指数は, 「カブトマル」 が2.6, 「モノホマレ」 が1.9, 「ユキヒノデ」 が0.9と, 明らかな品種間差が認められた. これらの品種間差は現地発病ほ場の結果と一致し, 現地ほ場に比べて均一な発病が認められた. 以上の結果から, 遊走子接種と多灌水処理を組み合わせた本手法は, 黒根病の抵抗性検定に用いる手法として有効と考えられ, 抵抗性品種の選抜・育成に貢献することが期待できる.