日本作物学会紀事
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栽培
耕うん・播種法の相違が乾田直播水稲の出芽・生育ならびに収量に及ぼす影響
岡部 繭子玉井 富士雄元田 義春名越 時秀武田 元吉
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2005 年 74 巻 2 号 p. 125-133

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抄録
乾田直播栽培における, 耕うん・播種法の相違が出芽や生育におよぼす影響について, 小面積圃場試験によって検討した. 水稲コシヒカリを供試し, 播種時の土壌条件として耕起, 不耕起および不耕起V溝(深さ5cm)播種の条件を, さらに播種法として耕起条件では穴播きで播種深度1,3cmおよび5cm, 不耕起条件では穴播きで1cmと3cm, 不耕起V溝播種では覆土少量, 覆土多量の処理区を設定した. 施肥は現地慣行の元肥少肥, 追肥1回とし, 土壌表面に散布した. 参考として出穂以後の調査には移植栽培も加えた. 乾田直播では耕起5cm区を除いて, 70%以上の出芽率が確保された. 処理区によっては, 出芽するまでに特に第2節間が伸長した. 初期の茎数の増加は抑制され, どの区も無効分げつの発生が少なかった. 耕起1cm区と3cm区では7月下旬から茎数の増加がほとんど見られなくなった. 穂首節から下の4節目の節から分げつする穂(高節位分げつ穂)が, 耕起1cm区および3cm区以外の直播区で多発した. 出穂後の茎葉の乾物重層別分布では, 移植区に比較して直播区は茎葉が下層に多く分布していたが, 耕起1cm区は移植区にやや近い分布を示した. 出芽から登熟にいたる生育全体を検討した結果, 不耕起V溝覆土少量区がもっとも優れていたが, 倒伏の危険が若干認められた. また, 不耕起3cm区では出芽率はほぼ80%で十分であり, 倒伏も見られなかったが, 茎数・穂数の確保がやや不良であった. 生育全体を通してみると, 不耕起栽培, とくに3cmの深さに穴播きする栽培法が安定生産の面でいくつかの利点を持つことが明らかになった.
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© 2005 日本作物学会
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