高温年において, 1株植付苗数を1, 3, 5, 7, 9本と変えて水稲品種キヌヒカリを圃場栽培し, 1株植付苗数が分げつの発生の仕方を中心とする生育にどの様に影響するかを検討した. 分げつの発生期間は, 1株植付苗数が多くなるほど短くなり, 9本区では1本区より2週間短い4週間となった. 発生時期は植付苗数が多くなるほど, 早い時期に集中した. 発生数は移植3週間までの分げつ初期では5本区までは植付苗数が多いほど多く, それ以上の場合は少なかった. 植付苗数が少ないほど, 1次分げつは主茎の高節位まで発生し, 1本区は3号分げつ(以下T3と表示)からT9まで, 3本区はT3からT8まで, 5, 7, 9本区はT3からT7まで発生した. 2次分げつは, 分げつ前期において3本区および5本区で多く発生し, 2次分げつが発生する主茎上の1次分げつの節位も1次分げつ上の節位も植付苗数の少ない区で多くなった. 出穂期間は5, 7, 9本区では8~9日であったが, 1, 3本区になると, 出穂期間が10~12日と広がり, 1本区では出穂開始日が数日遅くなった. 1穂籾数は次位が高い分げつほど少なくなり, 最も大きい穂をつける1次分げつは, 1, 3, 5, 7, 9本区でそれぞれT7, T6, T5, T5, T4であり, その前後で小さくなった. 2次, 3次分げつの1穂籾数には, 節位の違いによる明確な差はなかった. 以上の様に, 高温多照条件下の栽培においては, 1株に植付する苗数の違いによって, 分げつ発生時期, 分げつ発生数, 出穂時期, 節位別の穂の大きさに差がみられることが明らかになった.
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