日本作物学会紀事
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品種・遺伝資源
水稲品種における幼植物の挫折強度と耐ころび型倒伏性の関係
坂田 勲小柳 敦史井辺 時雄坂井 真吉田 智彦
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2005 年 74 巻 2 号 p. 172-178

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抄録

湛水直播栽培において重要視される耐ころび型倒伏性を育種目標とした場合, 効率的に品種育成を行うためには幼植物で選抜ができることが望ましい. そこでまず, 国内外の特徴的な20品種を圃場で栽培し, 出穂後14日に押し倒し抵抗を測定し, 同時に株を分解して下部茎の挫折強度を測定した. その結果, 挫折強度は12.9~27.9 Nと, 大きな品種間差を認めた. 押し倒し抵抗と挫折強度は非常に高い正の相関関係にあった. 次に同じ20品種について, 播種後23日における幼植物の茎葉部基部における挫折強度を測定した結果, これも2.66~6.68 Nと大きな品種間差を認めた. これと出穂後14日の押し倒し抵抗, および下部茎の挫折強度との間には有意な正の相関関係があった. 20品種のうち出穂後の下部茎の挫折強度の変化が特徴的と考えられる8品種について出穂後の押し倒し抵抗と下部茎の挫折強度を経時的に測定したところ, 押し倒し抵抗は大きく変化しなかった. 下部茎の挫折強度は明らかに低下したものが3品種, 大きく変化しなかったものが5品種あった. しかし出穂後10日, 20日および30日において, 押し倒し抵抗と下部茎の挫折強度は常に高い相関関係にあった. 以上の結果から, 幼植物の茎葉部基部の挫折強度は登熟期間における下部茎の挫折強度および, これと相関の高い押し倒し抵抗の品種間差をよく表していると考えられるため, 品種の耐ころび型倒伏性を生育初期の短期間で検定できる可能性が明らかになった.

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© 2005 日本作物学会
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