日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
水稲成苗による複条並木植栽培の収量性
―熊本県菊池郡市における事例―
片野 學真鍋 孝難波 正孝
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2005 年 74 巻 2 号 p. 218-223

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抄録
昭和61年度, 収量停滞打破を目指す一方策として, 熊本県菊池郡市に第6葉抽出成苗(不完全葉を1とする)ポット苗移植機が導入された. 本機導入に伴う栽培管理方法は, 導入先進地である山形県からもたらされたものであり, その特殊個別技術として6ないし8条を1つの単位(複条)とし, それらの間に2条間分に相当する60cmを空ける栽植方法(以下, 複条並木植, 複条と複条との条間を複条間と呼ぶ, また, 複条内の条間は30ないし33cmである)があった. 調査を行った水田は品種コシヒカリおよびミナミニシキが複条並木植されていた9水田であり, 両品種とも成熟期に, 複条並木植の各条から連続した15株を収穫し, 15株の占有面積を測定後, 常法に従って収穫物調査を行った. まず, 6月5日に移植し, 9月20日に収穫した複条間が約60cmであったコシヒカリ2水田における最外列(各複条の最外列2条をいう, 以下同様)単位面積当たり収量は中央列(最外列2条以外の条, 以下同様)の82%と87%であった. 次に, 6月下旬に移植し10月末から11月上旬に収穫したミナミニシキ7水田における複条数は6, 8および12, 複条間も45と60cmなど様々であった. 中央列に対する最外列単位面積当たり収量は, 複条間が約45cmであった2水田ではほぼ同じであったが, 60cmの場合, 毎年2~5t/10 a相当の完熟豚糞が施用された1水田を除く4水田の場合には78%~91%にとどまっていた. 両品種ともに複条の最外列では, 占有面積拡大分に見合う穂数と1穂収量の補償効果が認められなかったためであった. 以上のように, 複条間を60cmとする移植法については減収する場合が多いことが明らかになり, 昭和62年度にはこの複条間距離で栽培する農家はいなくなった.
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© 2005 日本作物学会
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