日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
作物生理・細胞工学
北海道で多収を示す秋播性ライコムギの成長解析-コムギ, ライムギとの比較-
義平 大樹唐澤 敏彦中司 啓二
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 74 巻 3 号 p. 330-338

詳細
抄録

1980年代以降にポーランドで育成された秋播性ライコムギ品種は北海道中央部において適応性を示し, 多収となる. その要因を乾物生産過程から明らかにするために, 5年間にわたり, 北海道育成のコムギ品種, およびポーランドのほか, ドイツ, 韓国育成のライムギ品種とともに栽培して成長解析を行い, 作物間で比較した. ライコムギはすべての試験年次において, コムギおよびライムギよりも多収を示した. ライコムギとコムギの子実収量の差は主として全乾物生産量の差に起因し, 起生期から止葉期までの期間の個体群成長速度(CGR)の差と関係していた. この高いライコムギのCGRは, 平均葉面積指数(MLAI)が大きくかつ純同化率が高いことによってもたらされた. 一方, ライコムギとライムギの子実収量の差は収穫指数の差に起因し, 開花始期から乳熟期までの期間の穂の乾物重の増加速度(EGR)の差と関係していた. このライコムギの高いEGRは, MLAIが大きいことによってもたらされた. これらの作物間差異は品種間差異よりも大きかった. 本実験の結果から, 供試したライコムギ品種の多収性は, ライムギ品種の具備する起生期から止葉期までの高い乾物生産能力と, コムギ品種の具備する開花始期から乳熟期までの高い穂部乾物重増加速度をあわせもつことにより実現したものと推察した.

著者関連情報
© 2005 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top