日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
ビール大麦の有用遺伝子の遺伝解析のための半数体倍加系統の作出
内村 要介古庄 雅彦馬場 孝秀山口 修甲斐 浩臣塚崎 守啓吉田 智彦
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2005 年 74 巻 4 号 p. 444-449

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抄録
分子マーカーを利用して有用遺伝子を効率的に導入する育種法を確立する目的で, 遺伝解析の材料として半数体倍加系統を作出するため, 徳島モチ裸由来のオオムギ縞萎縮病抵抗性品種縞系6とオオムギ縞萎縮病罹病性品種lk2のF1に野生オオムギのcb2920を交配して得た胚を培養して, コルヒチン処理を行った. 半数体倍加系統の作出率は, 野生オオムギを受粉したF1の穎花数に対して, 4.5%であった. 半数体倍加系統95系統のオオムギ縞萎縮病(?T型)に対する表現型は, 抵抗性が48系統と感受性が47系統で, 期待分離比1 : 1に適合した. また, 分子マーカーにより検出した半数体倍加系統の遺伝子型は, ヘテロ型は全く検出されず, 分子マーカー37種類のうち36種類において縞系6ホモ型 : lk2ホモ型が1 : 1の期待分離比に適合した. 半数体倍加系統群は遺伝解析の材料として, 完全なホモ接合体で劣性遺伝子の形質発現が評価できること, ヘテロ型が判定できない優性の分子マーカーも有効に使えること, 表現型および遺伝子型の分離比が単純であること, 同一の遺伝子構成の材料として維持・増殖が容易なため, 様々な環境条件下で形質評価を繰り返し行うことが可能で, 遺伝子発現の評価の信頼性を高めることができる点で優れていた.
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© 2005 日本作物学会
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