抄録
北海道東部に位置する網走市から斜里町にかける地域の淡色黒ボク土地帯ではリン酸肥料の過剰投入やカリウムの土壌への蓄積が認められ, 施肥量の適正化が強く求められている. 本研究では2001年から3ヶ年間にわたり当地域で現在慣行的に施肥されているリン酸とカリウム施肥量をそれぞれ25%と33%減肥し, テンサイの生育と収量に及ぼす影響について検討した. 減肥区の土壌の有効態リン酸含有量と交換性カリウム含有量は, 慣行施肥区に比べ低く推移する傾向にあったが, いずれも北海道の土壌診断基準値以上で推移していた. テンサイの草丈, 葉数, 根周は, 3ヶ年とも減肥区と慣行施肥区の間に有意差が認められなかった. 2002年の糖度は, 減肥区が慣行施肥区に比べ高かったが, 茎葉重量, 根重量および糖収量とも減肥区と慣行施肥区との間に有意差は認められなかった. 更に, 2003年にリン酸38%減肥と50%減肥及びカリウム100%減肥がテンサイ収量に及ぼす影響を検討したところ, いずれの減肥試験区でも茎葉重量, 根重量, 糖度および糖収量に慣行施肥区との有意差は認められなかったことから網走地域における淡色黒ボク土では現行の施肥量よりもリン酸とカリウムを減肥できるものと考えられた.