日本作物学会紀事
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品質・加工
サツマイモ品種・系統の蒸切干(干しいも) 加工過程における品質特性の経時変化
藏之内 利和中村 善行田宮 誠司中谷 誠
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2006 年 75 巻 1 号 p. 44-50

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抄録
サツマイモ塊根を蒸煮・薄切り・乾燥した加工品である蒸切干(干しいも)は, 茨城県の重要な地域特産品である. しかし, 近年は輸入品が増加し, 国産製品の品質向上が緊急な課題となっている. そこで, 蒸切干加工時の乾燥経過と品質関連特性の経時変化を調査し, 蒸切干加工法の改善と高品質系統の効率的な選抜に向けた検討を行った. 蒸切干の乾燥に伴って明度が低下し, 赤味が増加して黄色味が減少する傾向が見られた. 蒸煮・薄切り直後の塊根片の色調には明確な品種・系統間差がみられ, 明度の品種・系統間差は乾燥により減少したものの, 色調の各測定値の品種・系統による高低関係が逆転することはなかった. 蒸切干の硬度や糖度には, 乾燥期間中を通じて常に明確な品種・系統間差が見られた. 以上のことから, 蒸煮直後の蒸しいもの性状から蒸切干の性状を予測することが一部の形質で可能であり, 蒸しいもの段階での選抜も可能であることが判明した. 蒸切干の含水率は乾燥終了時には30%を下回り, 品種・系統間差はほとんど無くなった. 過乾燥により蒸切干の硬度が高すぎる例もあったことから, 一部の品種・系統は乾燥期間をやや短縮する必要があると考えられた. 蒸切干の硬度と糖度との間には負の相関関係が見られた. したがって, 適度な硬度で食感の良い蒸切干作成のためには, でん粉の糖化を促進するように時間をかけた蒸煮方法が重要であり, これは食味の向上という点でも重要であろう.
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© 2006 日本作物学会
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