日本作物学会紀事
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水稲の極良食味品種選抜のための指標形質となる理化学的特性の検証
和田 卓也坪根 正雄濱地 勇次尾形 武文
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2006 年 75 巻 1 号 p. 38-43

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抄録
1998年から2002年の5カ年において, 極早生から晩生までの20品種を用いて, 食味と食味関連理化学的特性, 農業形質との関係を解析し, 今後の良食味品種選抜のための指標形質について検討した. クラスター分析により, 供試した品種は食味のレベル別に, 第1群 : 食味がコシヒカリ並みの品種群, 第2群 : 食味がコシヒカリより優れる品種群, 第3群 : 食味がコシヒカリよりもやや劣る品種群, 第4群 : 食味がコシヒカリよりも大きく劣る品種群, の4群に分類された. 4群全てを込みにして食味との関係をみると, アミロース含有率, タンパク質含有率, アミログラムの最高粘度, ブレークダウン, テクスチャー特性値(H/-H, H/A3)において, 有意な相関が認められた. 近年の育成系統の食味をみると, 食味がコシヒカリよりも大きく劣る品種は年々減少していた. そこで, 食味が劣る第4群を除いて, 食味が優れる第1~第3群までを込みにして食味との関係をみると, アミロース含有率とテクスチャー特性値(H/-H, H/A3)においてのみ, 有意な相関が認められた. 食味レベル別の4群間のアミロース含有率とH/-Hの比較を行ったところ, アミロース含有率は第1~3群間の相互の差が有意でなかったのに対し, H/-Hは食味がコシヒカリよりも優れる第2群と食味がコシヒカリよりもやや劣る第3群との間に有意差が認められた. テクスチャー特性値は品種の出穂特性に影響を受けず, 食味レベルが高い集団内にあっても有効な選抜指標形質になりうることが明らかとなった.
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© 2006 日本作物学会
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