日本作物学会紀事
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品質・加工
秋まきコムギ品種キタノカオリにおける低アミロコムギの発生要因
中津 智史佐藤 康司佐藤 仁神野 裕信
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2007 年 76 巻 1 号 p. 79-85

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抄録
アミロ値は重要なコムギ品質の特性値であるが,穂発芽の過程で活性化されるα-アミラーゼによって低下すると,低アミロコムギとなり加工適性が劣る.秋まきコムギ新品種のキタノカオリについて,2001~2005年に北海道内のべ52地点で成熟期の子実試料を採取し,穂発芽粒率およびα-アミラーゼ活性,フォーリング・ナンバーを調査した.その結果,2003年の7地点で穂発芽は認められないが,高α-アミラーゼ活性で低フォーリング・ナンバーの低アミロコムギが認められた.一方,主要品種であるホクシンではこのような現象は認められなかった.成熟期前の気象条件とキタノカオリの成熟期のフォーリング・ナンバーとの相関を検討した結果,降水量,日照時間との相関は低く,成熟期前4週間の平均気温とはr=0.635(p<0.01,n=52)の比較的高い正の相関が認められ,17℃以下でフォーリング・ナンバー300以下の試料が複数認められた.登熟期の温度処理試験の結果,成熟期前約3週間が低温条件(平均気温15℃)であったキタノカオリでは,高温条件(平均気温20℃)の場合よりも成熟期直後のα-アミラーゼ活性が高い傾向を示した.成熟期以降の降雨処理試験の結果,キタノカオリはホクシンよりも穂発芽粒率およびα-アミラーゼ活性が高く,低アミロ化しやすい傾向を示した.以上のことから,キタノカオリは登熟期の低温条件により成熟期のα-アミラーゼ活性が高まりやすく,成熟期以降の降雨に対してもホクシンより穂発芽しやすいことを明らかにした.
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© 2007 日本作物学会
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