抄録
台風に伴う潮風害による水稲の被害程度には, これまで, 穂部に付着した塩化ナトリウム量を指標とした報告があり, 1穂当り塩化ナトリウム量が1mg以上になると被害が顕著に現れるとされている. 硝酸銀滴定や原子吸光光度, イオンクロマトグラフィーによる塩化ナトリウム量の定量は精度は高いが, 簡便性・迅速性に欠け, 設備の点からも現場における対応は難しい状況にある. そこで, 2004年の台風15号によって潮風を受けた水稲の穂部に付着した塩分量の測定に, 簡便な方法として土壌溶液中の塩類濃度の測定に用いられているEC計を利用する方法を試みた. その結果, 既知濃度の塩化ナトリウム溶液とEC測定値との関係から求めた水稲穂部の塩分量は, イオンクロマトグラフィーで定量した塩化ナトリウム量と近似しており, 穂に付着した塩分量をECによって推定することが可能であると考えられた. そして, ECから求めた水稲穂部の塩分量が多いほど籾の被害程度は大きく, 海岸線からの距離が近いというイオンクロマトグラフィーと同様の関係が示され, ECを利用した簡易診断によって潮風害程度・範囲の把握が可能であることがわかった.